予防接種とは

予防接種イメージ

予防接種とは、病気への免疫(抵抗力)をつけるためにワクチンを接種することをいいます。
ワクチンによって免疫を獲得しておけば、病原体が体内に入っても発症を防いだり、症状を軽くしたりすることができます。
さらに、人口の一定以上の割合の人が免疫を獲得することを「集団免疫」といい、集団全体が免疫を持つことで感染拡大を防ぎ、社会全体を守るという効果もあります。

大切なご家族、とくに高齢の方や基礎疾患をお持ちの方、お子さんや妊婦さんを守るためにも、予防接種は非常に大きな役割を果たします。
病気になってから治療するのではなく、かからないように予防することが重要です。

当院では各種予防接種を行っており、名古屋市の予防接種事業の協力医療機関にもなっていますので、お気軽にご相談ください。

ワクチンの種類には以下のようなものがあります

生ワクチン

病原体の毒性を弱めたもの(例:麻しん・風しんワクチン)

不活化ワクチン

病原体の毒性や感染力をなくしたもの、もしくは成分だけを使ったもの(例:インフルエンザワクチン)

トキソイド

病原体の出す毒素を無毒化したもの(例:破傷風ワクチン)

mRNAワクチン

病原体の一部の遺伝情報(mRNA)を使って体に免疫をつける新しいタイプ(例:新型コロナワクチン)

当院では以下の予防接種を行っています

インフルエンザワクチン

インフルエンザは、インフルエンザウイルスによって引き起こされる感染症です。
日本では主に12月ごろから翌年3月ごろにかけて流行する傾向があります。

インフルエンザの典型的な症状としては、38度以上の高熱、鼻水、咳、頭痛、関節痛、筋肉痛、倦怠感などがあげられます。
通常、インフルエンザは1週間ほどで回復しますが、いわゆる「かぜ」より症状が重くなりやすい特徴があります。
高齢者や基礎疾患のある方は、持病の悪化や肺炎などの合併症を起こすことがあり入院や死亡の危険が増加します。
また、お子さんの場合には、熱性痙攣や中耳炎を併発することがあります。
厚生労働省のデータでは、日本では1シーズンに100~300人の小児が急性脳症を発症し、これは死亡率が10~30%、生存しても25%程度に何らかの後遺症が残る病気と言われています。

インフルエンザワクチンは残念ながら接種すれば絶対に発病を防げるというものではありませんが、発病を予防し、発病後の重症化や死亡率を低下させることには一定の効果があると言われています。
ワクチンの予防効果が現れるまでには約2週間かかるとされており、その効果は約5か月間持続するとされているため、10月中旬ごろから12月中旬ごろまでにワクチンを接種するのが理想的です。
またインフルエンザワクチンは、その年に流行すると予測されるウイルスに基づいて作られていることもあり、毎年接種することが大切です。

名古屋市では高齢者を対象として予防接種法に基づきインフルエンザの予防接種を行っています。
負担額の助成対象となるのは満65歳以上の方、および満60歳から満64歳の方で一定の条件を満たす方となります。

新型コロナウイルスワクチン

新型コロナウイルス感染症は、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV2)による感染症です。
世界中で猛威を振ったこのウイルスは、日本ではすでに5類感染症に移行していますが、ウイルスは変異しながらいまだに流行を繰り返しています。

健康な若い方であれば、発熱や咳、鼻水、咽頭痛、頭痛、倦怠感など風邪に似た症状で済むこともあります。
しかし、高齢者や基礎疾患のある方、免疫が低下している方は新型コロナウイルスに感染すると重症化しやすいとされています。
また、新型コロナウイルス感染症は治癒した後も様々な後遺症があることが報告されており、感染症が治癒したあとも日常生活に影響を及ぼすことがあります。

重症化や後遺症で苦しまないために最も重要なことは、感染の予防です。
手洗い、マスク着用、咳エチケット、換気は新型コロナウイルスに限らず、他の細菌・ウイルス感染症に対しても有効な対策です。
そしてもう一つ有効な対策は、ワクチンの接種です。新型コロナウイルスのワクチンは、感染予防だけでなく、重症化のリスク、後遺症の軽減にも寄与するとされています。
高齢の方、持病のある方はもちろん、重症化しにくいと言われる若い方、健康な方も、後遺症で苦しまないためにワクチン接種をお勧めします。

新型コロナウイルスワクチンは、令和6年度から定期接種となりました。
対象となるのは満65歳以上の方および満60歳から満64歳の方で一定の条件を満たす方となります。
名古屋市でも定期予防接種として新型コロナワクチンを実施しています。

肺炎球菌ワクチン

肺炎は高齢者の死因上位の病気です。肺炎を起こす病原体の中でも特に重症化しやすいものの一つが肺炎球菌です。
肺炎球菌は、主に感染した人からの咳やくしゃみなどの飛沫を吸い込んで感染します。

肺炎球菌による肺炎の典型的な症状としては、発熱、痰が絡んだ咳、息苦しさですが、高齢者では典型的な症状が出にくく「なんとなく元気がない」というだけのこともあります。
小さなお子さん、高齢者や基礎疾患を持つ方では重篤化するリスクが高く、肺炎に留まらず全身に菌が回って髄膜炎や菌血症を合併する侵襲性肺炎球菌感染症を起こすことがあります。
これは死亡率が10~20%と言われる非常に危険な病気です。

肺炎球菌ワクチンで全ての肺炎を予防できるわけではありませんが、感染予防、重症化予防のためにはワクチン接種が有効です。
お子さんは生後2か月から定期接種が受けられます。
成人の方は、23価肺炎球菌莢膜ポリサッカライドワクチンを定期接種で受けることができ、満65歳の方、および満60歳から64歳の方で一定の条件を満たす方が対象となります。
名古屋市では、高齢者肺炎球菌の定期予防接種に加え、定期予防接種の対象者に該当しない66歳以上の方にも独自の費用助成が行われています。
また公費助成の対象とはなりませんが、沈降20価肺炎球菌結合型ワクチンを併用することで肺炎球菌感染予防さらに確実にすることができます。

風しん・麻しん(風しん麻しん混合)ワクチン

麻しんは麻しんウイルスが原因で発症する感染症で、「はしか」として広く知られています。
空気感染、飛沫感染、接触感染によって人から人へと広がる、非常に感染力の強いウイルスです。
そして免疫を持っていない人が感染すると、ほぼ100%発症すると言われています。
感染後10日ほどで、発熱や咳、鼻水、目の充血などの風邪に似た症状が現れ、数日で一旦症状が治まりかけたと思った後に39℃以上の発熱と全身に発疹が出現するのが特徴です。

肺炎や中耳炎などの合併の他、まれに脳炎を引き起こすこともあり、先進国であっても1,000人に1人が死亡すると言われています。

麻しんウイルスは空気感染するため、通常のマスクや手洗いのみでは予防ができません。
麻しんにかかったことがない方や、ワクチン接種の記録がない方は、感染予防のためにワクチン接種が勧められます。

風しんは風しんウイルスによって引き起こされる感染症で、発熱や全身に広がる発疹、耳の後ろのリンパ節の腫れなどが特徴的です。
小児に多く見られる病気で、熱も発疹も3日ほどで治るため「三日ばしか」とも呼ばれることがあります。
しかし大人がかかると稀ではありますが重症化することがあり、脳炎や血小板減少性紫斑病などの合併症を引き起こすことがあります。

とくに注意が必要なのは妊娠中の女性で、妊娠初期に風しんウイルスに感染すると、胎児に心疾患や白内障、難聴などを伴う先天性風疹症候群を生じることがあります。
こうした事態を防ぐためにも、妊娠を希望する女性やそのパートナー、周囲の方は抗体価を測定し、抗体が十分でない場合はワクチンを接種しておくことが大切です。

名古屋市では妊娠希望の方およびパートナーや同居人の方への任意風しん抗体検査及び予防接種の費用助成があります。

帯状疱疹ワクチン

子供のころにかかった水痘(みずぼうそう)ウイルスが、治った後も長期間体内の神経の中に潜伏します。
加齢や疲労、ストレスなどで免疫力が低下すると、潜伏していたウイルスが再び活性化し、神経に沿って発疹が出現します。
帯状疱疹は水ぶくれを伴う赤い発疹が帯状になって体の左右どちらかに出現し、強い痛みを伴います。

皮膚症状は数週間で治りますが、痛みが長く続くことがあります。
この痛みは「帯状疱疹後神経痛」と言われ、数か月以上痛みが持続することがあり、生活の質を大きく低下させます。
目の周囲に帯状疱疹が出現した場合は、結膜、角膜、虹彩などに炎症を起こし視力低下や失明に至ることもあります。
また、耳の周りに帯状疱疹が出現した場合は、顔面神経麻痺、耳痛、めまい、難聴などの症状を引き起こすことがあります。

日本では、帯状疱疹は80歳までに約3人に1人が発症すると言われています。
また、50歳以上の約2割の方が帯状疱疹後神経痛になるというデータもあります。
帯状疱疹ワクチンは発症の予防だけでなく、重症化や後遺症のリスクを抑える効果もあり、長期に様々な症状で苦しまないためにもワクチン接種が重要です。

名古屋市では定期予防接種として帯状疱疹予防接種を実施しています。対象となるのは当該年度に65歳になられる方です。また65歳を超える方については、5年間の経過措置として5年齢ごと(当該年度に70、75、80、85、90、95、100歳となる方)の年齢となる方が対象となります。

RSウイルスワクチン

RSウイルスによる感染症で、生後1歳までに半数以上、2歳までにほぼ100%の子供が少なくとも1回は感染すると言われています。
RSウイルスは、感染した人の咳やくしゃみなどの飛沫を吸い込んだり(飛沫感染)、感染した人が触れたことでウイルスが付いた物品に触れたりすることで感染します(接触感染)。

多くは発熱、鼻水などの軽い風邪のような症状ですが、細気管支炎、肺炎に至ることもあります。
特に生後6か月以内にRSウイルスに感染すると重症化しやすく、重篤な合併症として、無呼吸発作、急性脳症などがあります。
生後1か月未満の新生児がRSウイルスに感染すると非典型的な症状のために診断が困難であったり、無呼吸発作で突然死することがあります。
成人では通常は風邪のような症状のみですが、基礎疾患に慢性呼吸器疾患を持つ高齢者では重症肺炎を起こすことが知られています。

残念ながら、現在、RSウイルスに対する特効薬はありません。
マスクが着用できる年齢であればマスクを着用し、子供たちが日常的に触れる部分をこまめに消毒する、手洗い・アルコール消毒による手指衛生が重要となります。
これらの対策に加えて、60歳以上の人と、生まれてくる子供を守る目的で妊婦に接種するワクチンがあります。
60歳以上の方に対するワクチン(アレックスビー)はRSウイルスの高い予防効果が確認され、1回の接種で2~3年効果が持続すると言われています。
また妊婦用のワクチン(アブリスボ)は、胎盤を通じて胎児に抗体を移行することで、生後6か月ごろまでの重症化しやすい時期の赤ちゃんを守ることができます。

子宮頸がん(HPV)ワクチン

ヒトパピローマウイルス(HPV)は、性的接触のある女性であれば50%以上が生涯で一度は感染すると言われる一般的なウイルスです。
ヒトパピローマウイルス(HPV)はさまざまな病気を引き起こしますが、中でも最も代表的な病気は子宮頸がんです。
子宮頸がんの95%以上はHPV感染によって引き起こされると言われています。
性交渉により感染したHPVが原因となり、子宮の入口付近に発生するがんが子宮頸がんです。

日本では、子宮頸がんは特に20代後半から40歳前後の女性に多く発症しており、年間で約3,000人の方がこの病気によって亡くなっています。
しかし、子宮頸がんはワクチンによって予防することができるがんであり、そのためワクチンの接種が推奨されています。

HPV感染は性行為を通じて起こることから、日本国内では、小学校6年生から高校1年生相当までの女子を対象とした定期接種が公費で行われており、対象の方は費用がかからずに接種を受けることができます。
さらに接種機会を逸した方には、公費によるキャッチアップ接種も行われています。

HPVワクチンには、2価の「サーバリックス」、4価の「ガーダシル」、そして9価の「シルガード9」という3種類のワクチンが存在します。
これらは、それぞれ異なる数のHPVの型に対応しており、特に9価のワクチンは、子宮頸がんの原因となるHPVの型のうち、80~90%を占める型への感染を予防できるとされています。
どの種類のワクチンを接種するかについては、個々の状況に合わせて医師にご相談いただくことが大切です。

上記以外の予防接種に関しても、ご相談に応じます。詳しくは当院までお問い合わせください。