健康診断で「肺の異常を指摘された方」へ

検診異常(胸部レントゲンと肺機能の異常)イメージ

毎年の健康診断(一般健診)やがん検診で行われる胸部レントゲン検査と、付加健診による肺機能検査は、呼吸器の病気を早期に発見するうえでとても重要な役割を果たしています。

「胸部レントゲンで異常所見の判定が出た」「肺機能検査で異常値が出た」など、健診結果に不安を感じている方は少なくありません。
当院では、こうした健診後の精密検査や診断にも対応しております。
気になる所見があれば、どうぞお早めにご相談ください。

胸部レントゲン検査とは

胸部レントゲン検査(胸部X線検査)は、健診/検診で最も一般的な呼吸器の検査です。
胸の前後方向から放射線を使って撮影する画像検査で、肺・気管・心臓・大血管・横隔膜など胸部の状態を一度に確認できるため、健康診断の基本項目として広く用いられています。
肺がん、肺炎、肺結核、気胸などの発見に役立つほか、心拡大や胸水貯留の所見も確認することができます。
この検査は簡単かつ被ばく量も少なく、国民全体に行う検診としては非常に優れていても、3次元の立体的な体の構造を2次元の平面にしているため、診断に限界があります。
そのため、まずは胸部レントゲン検査で異常が見られた場合に、CT検査で本当に異常があるのかを精査(精密検査)していく必要があります。

胸部レントゲンの判定とその意味

健康診断の判定と、肺がん検診の判定は、分類が違うので注意が必要です。

健康診断の結果については、各機関によって違いますのでここでは一例をあげます。

  • A判定:異常なし
  • B判定:軽度異常
  • C判定:要再検査・生活改善
  • D判定:要精密検査
  • E判定:治療中

肺がん検診は以下の通りです。

A判定:読影不能
再撮影となります。
B判定:異常所見を認めない
現時点で病的な所見はありません。
C判定:異常所見を認めるが精査を必要としない
治療や精密検査の必要はないものの、経過観察が望まれます。
D判定:異常所見を認め肺がん以外の疾患で治療が必要と考えられる
所見に変化がないか、再検査が推奨されます。
E判定:肺がんの疑い
肺がんの可能性があるため、速やかな専門医受診が必要です。

胸部レントゲンで見つかる主な異常と疑われる疾患例

肺野の異常影(結節影、浸潤影など)

肺がん

肺の一部に丸い影(結節)として現れることがあります。
肺がんはかなり大きくなるまで無症状であることが多いため、レントゲンによる発見がカギになります。

肺炎

白い影(浸潤影)が局所的または広範囲に見られ、発熱や咳を伴うことが多いです。

肺結核

肺の上の方に影が出やすく、空洞形成や石灰化を伴う場合もあります。

肺の過膨張、気腫性変化

肺気腫(COPD)

喫煙者に多く、肺が過膨張し、血管影が減少して見えることがあります。

胸膜の異常、胸水

胸水貯留

肺と胸膜の間に水が溜まる状態で、肺が押しつぶされたように見えることがあります。

気胸

肺に穴があき、空気が胸腔に漏れる状態。肺がしぼんで見えることがあります。

心臓の影(心陰影)の拡大

心不全、心肥大

心臓の陰影が通常より大きくなり、肺にもうっ血の所見が見られることがあります。

肺機能検査とは

肺機能検査は、呼吸機能検査と呼ばれることもありますが、肺がどれだけ空気を取り込めるか、吐き出せるかといった肺の機能(呼吸機能)を数値で測定する検査です。
健診や人間ドックでは主にスパイロメトリーという方法が使われます。

この検査では、呼吸器疾患の有無・重症度を確認することができます。
肺機能に異常がみられる場合、気道(空気の通り道)が狭くなっている、肺が硬くなっている、呼吸筋の筋力低下、胸郭の形状に異常がある、といったことが考えられます。

肺機能検査の種類と方法

スパイロメトリー

鼻をクリップで閉じ、口にくわえたマウスピースから指示に従って息を吸ったり吐いたりします。以下の項目が主に測定されます

1回換気量普通に呼吸したときに肺に出入りする空気の量
肺活量(VC/SVC)最大限に息を吸い込み、ゆっくりとすべて吐ききる空気の量
努力性肺活量(FVC)最大限に息を吸い込んだ後、全力で一気に吐き出したときの空気の量
%肺活量(%VC)年齢・性別・身長から推定される予測肺活量に対し、その方の肺活量の割合。80%以上が基準値。
1秒量(FEV1)努力性肺活量のうち最初の1秒間にどれだけ息を吐けるか
1秒率(FEV1/FVC)努力性肺活量に占める1秒量の割合。70%以上が基準値。

肺機能検査の結果から、以下のようなことがわかります

1秒率 < 70% の場合

閉塞性換気障害の疾患が疑われます。主な疾患としては、COPD、気管支喘息などがあります。

%肺活量 < 80% の場合

拘束性換気障害の疾患が疑われます。主な疾患としては、間質性肺疾患、胸郭変形、重症筋無力症などがあります。

1秒率 < 70% かつ %肺活量 < 80% の場合

混合性換気障害が疑われます。上記のような疾患の混合が考えられます。

上記のほか、肺結核や過去の肺手術の後遺症などについても評価することができます。

健診異常を指摘されたら、精密検査を受けましょう

健康診断や人間ドックで「要再検査」「要精密検査」の判定が出た場合、自覚症状がなくても放置せずに呼吸器専門医を受診することが非常に大切です。
肺や気道の病気は、初期にはほとんど症状が出ないことも多いため、検査による早期発見が重要になります。

当院では、健診後の二次検査(胸部CT、呼吸機能精密検査、喀痰検査、血液検査など)にも対応しています。
検査結果に不安のある方、再検査を迷っている方は、お気軽にご相談ください。