間質性肺炎とは

間質性肺炎は、肺の中で酸素と二酸化炭素の交換を行う肺胞の周囲にある「間質」という組織に、炎症や線維化(硬くなる変化)が起こる病気の総称です。
発症すると肺が硬くなり、十分に空気を取り込めなくなるため、呼吸困難が生じます。
日本では中高年の男性に多くみられる傾向があります。
間質性肺炎は、上記の通り、肺の間質という場所に起きている炎症疾患の総称であり、その内部にはさまざまな分類が存在します。
そのうち原因がよくわかっていない「特発性肺線維症(IPF)」が最も多いとされ、ほかに関節リウマチ、全身性強皮症、皮膚筋炎・多発筋炎などの「膠原病に伴う肺炎」、また抗がん剤や抗生物質、リウマチ薬などが原因となる「薬剤性の肺炎」、アスベストやカビ、農薬などの吸入による「職業性・環境性の肺炎」、さらにがんの放射線治療後に発症する「放射線性の肺炎」、一部のウイルス性肺炎などでもみられます。
とくに「特発性肺線維症(IPF)」は慢性的に肺の繊維化を進行させ、不可逆的な(元に戻らない)呼吸機能の低下を起こすため、早期の発見と治療が重要です。
間質性肺炎の症状
このような症状があれば間質性肺炎が疑われます
- 労作時の息切れ(階段・坂道での呼吸困難)
- 慢性的な空咳(痰が出ない乾いた咳)
- 胸の不快感や圧迫感
- 疲れやすさ、全身倦怠感
- ばち指(指先の変形)
- など
間質性肺炎が進行すると、肺の線維化が進んで呼吸機能が大きく低下します。
日常的な軽い動作でも息苦しさを感じるようになり、酸素不足によるチアノーゼ(唇や指先が紫色になる)、体重減少、全身の衰弱などが見られるようになります。
最終的には呼吸不全に至り、在宅酸素療法が必要となるケースもあります。
また、急性増悪といって突然症状が悪化し、命に関わる状態になることもあるため注意が必要です。
間質性肺炎の検査方法
視診・聴診
呼吸の状態、ばち指の有無、肺雑音(捻髪音)がないかなどを確認します。
血液検査
炎症反応(CRP)、自己抗体(膠原病の有無)、KL-6やSP-Dなどの間質性肺炎マーカーを調べます。
画像検査(胸部X線・CT)
レントゲンでは両側性のすりガラス影、CTでは蜂巣肺(はちの巣状変化)などが確認され、病型や進行度の把握に役立ちます。
呼吸機能検査
肺活量を測定し、拘束性換気障害の有無を評価します。
気管支鏡検査
当院では行っていないため他病院で実施することになりますが、診断の確定が困難な場合や、他の疾患との鑑別が必要なときに行われ、肺胞洗浄液の分析や組織採取(生検)を行います。
間質性肺炎の治療法
間質性肺炎の治療は、その原因や病型、進行の程度に応じて異なりますが、一般的には完治が難しい病気です。
特発性肺線維症(IPF)のように進行性の線維化を伴うタイプでは、病気の進行を抑えるために抗線維化薬が用いられます。
膠原病など自己免疫性や炎症性の間質性肺炎では、副腎皮質ステロイド薬や免疫抑制薬を使って炎症を抑える治療が行われます。
呼吸困難や低酸素血症がみられる場合には、在宅酸素療法が導入されることもあり、酸素を補うことで日常生活の質を保ちます。
また、呼吸リハビリテーションによって、呼吸筋の機能を高め、息切れを軽減する効果も期待できます。
間質性肺炎は進行性の病気であるため、これらの治療を組み合わせながら、定期的な呼吸機能検査や画像評価など経過観察を行い、病状を管理し、きめ細やかな対応をしていくことが重要となります。
また風邪やインフルエンザなどの感染症をきっかけとして、急激に悪化する場合があり、咳や呼吸困難が急速に進行するため、風邪などの感染症にかからないよう注意する必要があります。
感染症の予防として、インフルエンザワクチンや肺炎球菌ワクチン、新型コロナウイルスワクチン、RSウイルスワクチンの接種が推奨されます。
間質性肺炎は、早期には目立った症状がなく、進行してから発見されることも少なくありません。
息切れや乾いた咳が長引く場合は、年齢に関係なく一度検査を受けることをおすすめします。