肺気腫(COPD)とは

肺気腫(COPD)イメージ

COPD(Chronic Obstructive Pulmonary Disease、慢性閉塞性肺疾患)は、主に喫煙などの有害物質の吸入により、肺胞が破壊されてしまう「肺気腫」と、気道に慢性の炎症が起こって空気の通り道(気道)が狭くなり呼吸がしにくくなる「慢性気管支炎」という2つの病態を含む病名です。

肺気腫は、タバコなどの有害物質が肺に入り込むことで、肺の最小単位である肺胞が破壊される病気です。
その結果、肺の構造が崩れ、息を吐く途中で気道(空気の通り道)を開いたまま保つことができなくなり、最後まで息を吐ききれなくなります。
これにより、息苦しさや呼吸機能の低下が生じます。
一度低下した呼吸機能は元に戻らず、時間とともに進行していくため、早期の禁煙や有害物質の回避が重要です。
さらに、息苦しさや呼吸機能の低下は患者さんの運動意欲を奪い、寝たきりの原因となることもあるため、症状を和らげる治療も大切です。

日本では40歳以上の約8.6%がCOPDの疑いがあるとされており、喫煙率が高かった世代ではとくに注意が必要です。
診断基準としては、呼吸機能検査によって1秒率(1秒間に吐き出せる空気量/肺活量)が70%未満であることが目安となります。

肺気腫(COPD)の最も大きな原因は「喫煙」であり、COPDの患者さんの約9割が喫煙者または過去の喫煙者です。
そのほか、受動喫煙、職業性の粉じん・ガスの吸入、大気汚染、室内環境(特に換気の悪い場所での調理煙など)も原因となります。
まれに遺伝によって生まれつきこの病気になりやすい患者さんもいます。

肺気腫(COPD)の症状

このような症状があれば肺気腫(COPD)が疑われます

  • 喫煙習慣がある、もしくは以前あった
  • 慢性的な咳や痰が続く
  • 階段や坂道で息切れがする
  • 風邪をひくと咳が長引く
  • 呼吸を整えるために歩行中に立ち止まることがある
  • 胸が詰まるような息苦しさを感じる
  • など

初期のうちは運動時の息切れや軽い咳程度でも、次第に症状は悪化し、少しの動きでも息切れを感じるようになります。
進行すると、安静時にも呼吸が苦しくなり、呼吸不全や心不全を引き起こすことがあります。
肺の感染症(肺炎)を繰り返すことも多く、悪化を防ぐための継続的な治療と管理が必要です。

肺気腫(COPD)の主な検査法

スパイロメトリー(呼吸機能検査)

COPDの診断において最も基本的かつ重要な検査です。
1秒量(FEV1)と肺活量(FVC)を測定し、1秒率(FEV1/FVC)が70%未満であればCOPDが疑われます。

胸部X線検査・CT検査

肺の過膨張や肺胞の破壊(気腫性変化)を視覚的に確認できます。
CTではより詳細に評価でき、病態の進行具合も把握できます。

FeNO検査(呼気中一酸化窒素濃度測定)

息が切れる病気として似ている喘息との鑑別に用いられます。
COPDでは通常FeNO値は上昇しません。

肺気腫(COPD)の主な治療法

禁煙

最も重要な治療法です。禁煙により肺機能の低下速度を大幅に抑えることができます。
禁煙補助薬やカウンセリングを併用して、禁煙の成功率を高めます。

薬物療法

吸入薬が中心です。主に以下の薬剤が使用されます。

  • 長時間作用型抗コリン薬(LAMA)
  • 長時間作用型β2刺激薬(LABA)

これらの薬剤は気道を広げ、症状を緩和するものです。
基本的に患者さんの症状やすでに持っている病気(既存症)に合わせ、組み合わせて使用していきます。

呼吸リハビリテーション・運動療法

当院では未導入ですが、専門的な呼吸訓練や有酸素運動により、息切れを改善し、日常生活の活動量を増やすことができます。

在宅酸素療法(HOT)

進行例では自宅で酸素を吸入する治療が必要になることがあります。
酸素の補給により、呼吸苦を軽減し生活の質を維持できます。

ワクチン接種

COPDの患者さんは感染症の影響を受けやすいため、インフルエンザワクチンや肺炎球菌ワクチン、新型コロナウイルスワクチン、RSウイルスワクチンの接種が推奨されます。

COPDは進行性の病気ですが、早期の発見と適切な治療により、症状の安定と生活の質の向上が可能です。息切れや咳が続いて気になる方は、年齢や喫煙歴にかかわらず、早めにご相談ください。