禁煙外来とは

喫煙は、全身の健康にさまざまな悪影響を及ぼします。
肺がんや慢性閉塞性肺疾患(COPD)などの呼吸器疾患をはじめ、動脈硬化による心筋梗塞・脳卒中などの循環器疾患、糖尿病などの生活習慣病、さらに多くのがんのリスクを高めることがわかっています。
タバコに含まれるニコチンやその他の有害物質は血管を傷つけ、動脈硬化を進行させるため、深刻な健康被害を引き起こします。
また、美容面でも皮膚のコラーゲンが減少することで肌のハリが失われ、シワが約7.6倍できるという報告もあります。
さらに、受動喫煙による健康被害も大きな社会問題です。
家庭内では子どもの喘息や乳幼児突然死症候群(SIDS)、妊婦の流産・早産など、タバコの煙による影響は世代を超えて広がります。
当院では禁煙外来を設け、禁煙をサポートします
「タバコをやめたいけれど、自力では難しい…」そんな方のために、当院では禁煙外来を開設しています。
医師によるサポートのもと、薬を使った治療を取り入れながら、無理なく禁煙を目指します。
禁煙治療は一定の条件を満たすことで健康保険が適用されるため、経済的な負担を抑えながら取り組むことが可能です。
禁煙によって、次のような効果が期待できます
- 咳や痰、息切れなどの呼吸器症状の改善
- 心筋梗塞や脳卒中のリスク低下
- がんの発症リスクの低下(特に肺がんは大幅に減少)
- 口臭の改善、味覚の回復
- 家族や周囲の人への健康リスクの軽減
- など
禁煙治療に使用する薬剤
ニコチンパッチ(成分名:ニコチン/ 商品名:ニコチネルTTS)
皮膚に貼るタイプの薬剤で、少量ずつニコチンを吸収させ、離脱症状(イライラ、集中力低下、眠気など)を和らげます。
血中ニコチン濃度を安定させることで、タバコを吸いたくなる衝動を抑える効果があります。
ニコチンの含有量に応じて、大・中・小の3種類があります。
※妊娠中の方や皮膚の弱い方には不向きな場合があります。
バレニクリン(商品名:チャンピックス)
脳内のニコチン受容体に作用し、ニコチンが結合するのを阻害します。
タバコを吸っても「おいしい」と感じにくくなり、自然と喫煙欲求が減少します。
服用開始後に吐き気などの副作用が出る場合があるため、医師の指導のもとで使用します。
※現在は製造上の問題により国内での供給が停止されています(再開時期は未定)。
禁煙カウンセリング
薬物療法と並んで重要なのが、医師やスタッフによる禁煙カウンセリングです。
禁煙は「ただタバコをやめればいい」という単純な行動ではなく、生活習慣やストレス対処、本人の意志の強さ、環境要因など、さまざまな心理的・社会的な背景が影響する行動変容です。
実際、ニコチンパッチや内服薬といった薬剤も、その開発段階からカウンセリングとの併用を前提としており、薬だけでは禁煙の成功率が高くないことが複数の研究で明らかにされています。
また、市販のニコチンパッチ(OTC医薬品)を自己判断で使用した場合と、医療機関で指導を受けながら使用した場合とでは、禁煙成功率に明らかな差があるとされています。
一人で禁煙を続けることは想像以上に難しく、挫折してしまう方も少なくありません。
「どうしてもやめられない」「以前に禁煙に失敗した」そんな方こそ、医療機関のサポートを受けることで、成功の可能性が高まります。
無理せず、ひとつずつ段階を踏みながら、専門スタッフと一緒に禁煙を進めていきましょう。
ニコチン依存症治療アプリ及びCOチェッカー
一酸化炭素(CO)濃度を測定・記録することで、禁煙の進行状況を可視化します。
本ツールはバレニクリンとの併用が前提となっているため、現在は使用できませんが、今後の製造再開や適応変更が期待されています。
保険適用の条件
以下の4つの条件をすべて満たすことで、禁煙治療は保険診療として受けられます。
- ニコチン依存症のスクリーニングテスト(TDS)で5点以上
- 35歳以上の方で、「1日の喫煙本数 × 喫煙年数」が200以上(ブリンクマン指数)
- 「禁煙治療のための標準手順書」に基づく説明を受け、文書で同意している
- 過去1年以内に同じ保険で禁煙治療を受けていない
※前回の治療から1年以上経っていれば、再チャレンジが可能です。
TDSテスト(10問/合計5点以上で保険適用の対象)
各設問に対して「はい=1点」「いいえ=0点」で採点します。
→ 合計点を記入し、スクリーニング結果を確認します。
問1 | 自分が吸うつもりよりも、ずっと多くタバコを吸ってしまうことがありましたか。 |
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問2 | 禁煙や本数を減らそうと試みて、できなかったことがありましたか。 |
問3 | 禁煙したり本数を減らそうとしたときに、タバコがほしくてほしくてたまらなくなることがありましたか。 |
問4 | 禁煙したり本数を減らしたときに、次のどれかがありましたか。(イライラ、神経質、落ちつかない、集中しにくい、ゆううつ、頭痛、眠気、胃のむかつき、脈が遅い、手のふるえ、食欲または体重増加) |
問5 | 問4でうかがった症状を消すために、またタバコを吸い始めることがありましたか。 |
問6 | 重い病気にかかったときに、タバコはよくないとわかっているのに吸うことがありましたか。 |
問7 | タバコのために自分に健康問題が起きているとわかっていても、吸うことがありましたか。 |
問8 | タバコのために自分に精神的問題(注)が起きているとわかっていても、吸うことがありましたか。 |
問9 | 自分はタバコに依存していると感じることがありましたか。 |
問10 | タバコが吸えないような仕事やつきあいを避けることが何度かありましたか。 |
合計 | 点 |
標準的な禁煙治療の流れ(全5回、約12週間)
当院の禁煙治療は、約12週間・5回の通院を基本としたプログラムで行います。
禁煙の進み具合に応じて、医師と相談しながら治療内容を調整していきます。
※一酸化炭素濃度の測定は行わない場合もあります。
1回目(初回):禁煙スタートの準備
- ニコチン依存度(TDSテスト)や喫煙歴の確認
- 治療薬(ニコチンパッチなど)の処方
- 禁煙開始日の決定と行動計画の立案
禁煙の目的を明確にし、スタートへの準備を整えます。
2回目(2週間後):離脱症状のチェックと対策
- 禁煙開始後の体調や気分の変化を確認
- 離脱症状(イライラ・眠気など)への対処
- 副作用や継続の難しさについての相談・調整
無理なく続けられるよう、状況に応じてサポートします。
3回目(4週間後):モチベーションの再確認
- 呼吸器症状や体調の改善状況を共有
- ストレスの対処法や再喫煙防止の工夫をアドバイス
ここまで来ると、変化を実感し始める方も多くなります。
4回目(8週間後):継続支援と確認
- 禁煙の継続状況をチェック
- モチベーションを保つためのヒントをお伝えします
気が緩みやすい時期なので、再確認が大切です。
5回目(12週間後):卒煙に向けて
- 治療の総括と、今後の再喫煙予防について確認
- 必要に応じて、継続的なサポートや再診をご案内します
「やめられた!」という実感を得られるゴールの回です。
タバコをやめることは、患者さん自身の命はもちろん、家族や大切な人の健康を守ることにつながります。
禁煙には不安もあるかもしれませんが、当院の禁煙外来では、医師とスタッフが最後まで伴走し、禁煙成功を支援します。
禁煙をお考えの方は、ぜひ一度当院の禁煙外来にご相談ください。